第14話   鶴 の「   平成15年7月28日   


明治時代の庄内に遊漁票なる税があったとは知らなかった。

鶴岡県が廃止になり、山形県になった頃の話であるから、明治の初期のことである。庄内は昔から釣りの盛んな土地であったから、他の県に遊漁票なる税などなかったのではないか?と思う。お役人の誰が考えたかは判らないが、税収を増やすために釣り人に「遊漁票」なる税を課した。実にうまいことを考えたものだ。釣り人というものは、悲しいかな酒やタバコと同じでいくら金を掛けても行きたい時は我慢が出来ず釣りに行きたいものだ。自分も、その事を土屋鴎涯の本を見てはじめて知った。

「鶴岡の○○会の釣り人は皆支払っているのに支払わない人達が居るのは実にけしからん」と云っている。「もぐりを捕まえるのは休日の朝網を張っていれば一人一円として二、三百円は直ぐに集まるだろう。」と書いている。当時の一円は大金である。

面白いのは「山形の領域外の海で釣るに県の世話は越権行為ではないのか?僕はそんな悪税を取る本県では釣りません。秋田、新潟に海岸線を行って釣るつもりです。」と風刺画風の遊漁票あらためるの図」に書いている事である。遊漁票なる税金はどう山形県独自のもので秋田、新潟県では遊漁票なる税などを取ってはいなかった事が分かる。裏を返せば、税金を払ってまでも釣に行く釣り馬鹿が庄内には沢山居た事にもなる。又、遊漁票なる悪税ではあったが、払わないで行く釣人も沢山いた。何処かの国の議員さんたちと同じように。馬鹿正直は損をすると云いたげな話だ。

どちらにしても伝統の釣り馬鹿天国「庄内」ならではの逸話である。

               参考図書 土屋鴎涯「磯釣り」、「鴎涯戯画」

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